「三大怪獣グルメ」(河崎実監督)

 河崎実監督といえば、自他ともに認めるバカ映画の巨匠として日本映画界に燦然と輝く存在だ。「いかレスラー」(2004年)や「地球防衛未亡人」(2014年)といったいかにも人を食ったようなタイトルの作品だけでなく、「日本以外全部沈没」(2006年)、「ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発」(2008年)などかなりの予算を注ぎ込んだ大作も、随所にボケをかましている。何しろ特撮ヒーローシリーズの「電エース」なんて、身長2000メートルというありえない設定だもんなあ。

 今度の新作「三大怪獣グルメ」も、そのあたりの期待は当然のごとく裏切らない。主人公の雄太(植田圭輔)は以前、超理化学研究所で生物を巨大化する薬の開発に携わっていたが、解雇されて今は実家のすし屋を手伝っている。ある日、魚市場で新鮮な魚介類を仕入れて自転車で帰る途中、すしネタがなくなっていることに気づく。と、そこに現れたのは……。

 導入部からトホホな予感だが、怪獣が巨大化した魚介類というのも、安易というか、わかりやすいというか。怪獣の名前も巨大イカのイカラに巨大タコのタッコラ、巨大カニのカニーラと、まるでひねりがない。その怪獣どもを迎え撃つのが、シーフード怪獣攻撃部隊(Seafood Monster Attack Team)、略してSMATときた日には、もう河崎ワールド全開といった趣だ。

 その後、雄太がSMATの一員になって「三大怪獣」に闘いを挑むのだが、クライマックスに向かうストーリーの大雑把さがまたたまらない。怪獣と戦う相手が、某かっぱ橋道具街の人しか知らないという驚愕のキャラクターで、それでも笑い転げるほどおかしい。本筋とは何の脈絡もなく意外な人物が登場するのもミソで、伝説のAV監督、村西とおるに、自称「餃子の王様」の公認サンタクロース、パラダイス山元、さらには「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之といった面々がスクリーンを彩る。ちなみに久住はこの作品の監修として名前が出ているが、いったい何を監修したんだろう。

 こうしてしっちゃかめっちゃかの末に大団円へと向かうのだけれど、最後のオチもいかにもトホホで、この徹底ぶりはさすがバカ映画の巨匠。一貫してぶれない姿勢は大いに称賛に値する。

 実は当方、河崎監督のことは20代のころから見知っていて、何度かインタビュー取材もしたことがあるが、若いときから印象は全く変わらない。ここまでバカに夢中になれる60代って、ほかにいるだろうか。コロナ禍で社会がどことなくシュンとしている今だからこそ、本格バカ映画を見て元気に盛り上がりたいものだ。(藤井克郎)

 2020年6月6日(土)からユーロスペースなど全国で順次公開。

© 2020「三大怪獣グルメ」製作委員会

日本映画「三大怪獣グルメ」から © 2020「三大怪獣グルメ」製作委員会

日本映画「三大怪獣グルメ」から © 2020「三大怪獣グルメ」製作委員会