「ウィーアーリトルゾンビーズ」(長久允監督)

 長久允監督はCM出身の現在34歳の若手だが、まずもって独特の映像感覚にびっくりした。何しろ「中から」の視線がバンバン出てくる。冒頭のポテトチップスの袋の中からの視線をはじめ、棺桶の中やら橋の下やら、いろんな中や下から外の世界を見開く。

 かと思えば、ドローンによる空撮をはじめ、真上からの俯瞰の絵も多用する。ひと昔前のゲーム画面のような映像処理も含めて、さまざまな創意工夫で映画の世界を非常にふくよかなものにするというセンスは見事の一言だ。

 物語の世界観も独特のものだ。主人公は4人の13歳の子どもたち。彼らが出会ったのは葬儀場で、いずれも両親を事件や事故で失ったばかりという不幸な境遇にある。だが彼らは全く湿っぽくなく、涙さえ出てこない。そんなゾンビみたいな少年少女が、やがて住みかとする廃屋でバンドを結成して…、というのが作品の骨子になる。

 4人はあくまでも冷めているのに、そんな彼らを利用しようとする周囲の大人たちがヒートアップして、その温度差が現代の世相を巧みに皮肉る。さらには、彼らの境遇の中にいじめ問題やらドメスティックバイオレンス(DV)やらという今日的な社会性がギュッと詰め込まれていて、単なるファンタジーだけにはなっていない。

 現代の子どもたちには夢も希望も友情もなく、ただ頼りはスマホだけ、という危うい状況にあることを示唆するが、決して声高に主張することなく、カラフルな衣装や奇抜な美術装置でポップに表現するというのが長久監督流か。まさに新しい時代の才能であり、今年のベルリン国際映画祭のジェネレーション14プラス部門で準グランプリに相当するスペシャルメンションを獲得したほか、世界最高峰の自主映画の祭典、米ユタ州のサンダンス映画祭でも審査員特別オリジナリティ賞に輝くなど、世界中で高い評価を受けているのも納得だ。

 さらに驚くべきは、子役の4人(二宮慶多、水野哲志、奥村門土、中島セナ)を取り巻く大人の出演者として、主役クラスの大物俳優がずらりと顔をそろえていることだ。佐々木蔵之介、工藤夕貴、池松壮亮、初音映莉子、村上淳、西田尚美、佐野史郎、菊地凛子、永瀬正敏などなど、意外な人が意外な役どころでちらっと顔を出している。それだけ長久監督が信頼の厚いクリエイターであるという証左でもある。この頼もしい新人監督が今後どんな方向に進むのか、映画ファンならずとも目が離せない。(藤井克郎)

 2019年6月14日、全国公開。

Exif_JPEG_PICTURE