「メン・イン・ブラック:インターナショナル」(F・ゲイリー・グレイ監督)

 宇宙人たちが地球人に紛れて普通に生活しているという設定のこの人気SFシリーズには、個人的に特別な思い入れがある。

 今をさかのぼること22年前の1997年の6月、英語と映画を勉強しに留学していた米ロサンゼルスで、シリーズ第1作「メン・イン・ブラック」(バリー・ソネンフェルド監督)のワールドプレミアに、配給元のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントから招待を受けた。場所はLAでも最大級の規模を誇る映画館、シネラマ・ドーム。本場ハリウッドのレッドカーペットセレモニーの興奮を間近に味わえるとあって、英語のクラスで一緒だった映画産業志望の韓国からの留学生と連れ立って、喜び勇んで出かけた。

 シネラマ・ドームの周辺はカクテル光線が飛び交い、何台ものテレビカメラが詰めかけるなど、いつもの閑散とした街並みとは一変していた。恐る恐る近づくと、スポットライトを浴びているひときわ華やかな一団がいる。見れば主役の一人、ウィル・スミスが家族とともにマスコミの取材に応じているところだった。翌日の新聞報道によると、ウィルはことのき、「この夏最高の映画、いや今年最高の映画だぜ」などと吠えていたらしい。もっとも英語学習途上の身には、全く聞き取れなかったが…。

 肝心の映画は、当時すでにVFXが当たり前になっていたとはいうものの、大小さまざまなエイリアンが生身の役者と何の違和感もなく共演している映像に度肝を抜かれた。ラストのバズーカで巨大宇宙船を撃ち抜く場面は、大画面のシネラマ・ドームだけに迫力満点で、大いに満足して会場を後にした。記念にもらったレイバンのサングラスは、今も大切に保管してある。

 で、新作の「メン・イン・ブラック:インターナショナル」である。前作の「3」から7年ぶりのシリーズ第4作だが、今回はおなじみのトミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのコンビから一新。「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースと「クリード チャンプを継ぐ男」のテッサ・トンプソンの若手男女が主役を務める。監督も「交渉人」などのF・ゲイリー・グレイに代わった。

 舞台もアメリカを飛び出し、ロンドン、パリ、マラケシュ(モロッコ)と、まさにインターナショナルだ。エイリアンの監視、取り締まりを行う国際的な機関「メン・イン・ブラック(MIB)」に実習生として採用されたモリー(トンプソン)はロンドン支部に派遣され、エージェントH(ヘムズワース)とコンビを組むことになる。Hは、かつてパリで大物エージェントのハイT(リーアム・ニーソン)とともに宇宙一邪悪なエイリアンから地球を守った伝説のエージェントだが、今ではへらへらした頼りない人物に成り下がっていた。

 Hに何があったのかという興味とともに、モリーがエージェントMとして一人前に成長していく過程が、ユーモアとアクション満載の軽快なテンポで描かれ、息つく暇を与えない。エイリアンのキャラクターも、醜悪な敵からおちゃめな味方までさまざまで、彼らが入れ代わり立ち代わり登場するのを眺めるだけでも楽しい。VFXはもう見飽きた感があるが、格闘シーンで3本目の腕が自在に出てくると、やるなあと思わず唸ってしまう。ダニー・エルフマンによるおなじみのテーマ曲の使い方も巧みで、さすがは「ストレイト・アウタ・コンプトン」で米ヒップホップの歴史を描いたグレイ監督だけに音楽センスがきらっと光る。

 新鮮なメンバーのおかげで、これまでのシリーズを知らない人にも置いてけぼり感はないだろうし、さらに次回作も期待できそうなラストといい、安心して楽しめる娯楽映画の王道に仕上がっていた。(藤井克郎)

 2019年6月14日、全国公開。

Exif_JPEG_PICTURE