「JKエレジー」(松上元太監督)

 なにせタイトルが「JKエレジー」である。女子高生のことを指すJKという俗語が登場したのはそんなに前のことじゃないだろうし、今も50代後半の私くらいの年代では、言葉の意味を知らない人は多いのではないか。それに流行語なんてものはすぐに廃れて死語になる。かつてのコギャルのように、そのうち誰も使わなくなったとき、そんな言葉をタイトルに冠した映画ってどうなのよ、という気がしないでもない。そういえば「バウンス ko GALS」(原田眞人監督、1997年)なんて映画もあったなあ。

 というわけで、「JK」という言葉から勝手にチャラい内容をイメージしたが、なかなかどうして、映画自体は意外と気骨のある作品になっていた。しかも「エレジー(哀歌)」と言いながら、貧乏暮らしの主人公はあくまでまっすぐ前向きで、決して落ち込まない。軽薄でもなく、深刻でもなく、程よいバランスで描かれる青春映画って、最近の日本映画ではあまり見かけないような。

 主人公のココア(希代彩)は、仕事もせずにギャンブルに狂う父親(川瀬陽太)、元漫才師で引きこもりの兄(前原滉)と3人で暮らす高校3年生。大学進学を夢見ているが、生活保護に頼る家にはそんな金はない。頼みの綱は奨学金だが、小遣い稼ぎで兄の元相方のカズオ(猪野広樹)が作るへんてこなビデオに出演していたことが学校にばれてしまい…。

 ココアはいたってまじめで勉強熱心なのだが、周りの大人がろくでもないやつばかり。父も兄も自分たちで稼がないばかりか、ココアが必死にためたお金をたかろうという始末だが、そんな劣悪な環境にもかかわらず、ココアはぐれて悪態をつくこともなければ、悲嘆にくれることもない。仲良しの同級生にときどき愚痴ったりはするものの、一緒にカラオケに行って中島みゆきの「ファイト!」を明るく熱唱するところなど、本当にけなげでジーンとくる。

 一方で父と兄のダメぶりは極めてカリカチュアライズされていて、母親の七回忌の場面など、オーバーすぎる演技で堂々とべたな笑いを追求する。カズオが撮るへんてこビデオも、ただ空き缶を踏みつけるだけの映像といったたぐいで、これもまた違うタイプの微妙な笑いが込められている。

 松上元太監督としては、緊張と緩和の振れ幅を大きくすることで、ココアの前向きさをさらに強調しようとしたか。大阪芸術大学出身で今年38歳という松上監督にとっては、これが初の劇場公開になる。ついつい肩に力が入りそうなものだが、この緩急のつけ方はなかなかの腰の据わり方だ。

 それにしてもココアを演じた希代のまっすぐな演技にはほれぼれする。学校の先生にもやくざまがいの男にも、決してひるむことなく自らの主張を貫き、でもやくざが去った後には「怖かったあ」と本音をもらす。このさわやかさに触れるだけでも、この作品を見る価値は十分にあるのではないか。
(藤井克郎)

 2019年8月9日からテアトル新宿、16日からシネ・リーブル梅田で公開。

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映画「JKエレジー」から。大学進学を夢見るココア(希代彩)だったが… @16bit.inc.

映画「JKエレジー」から。ココア(中央、希代彩)の支えは仲のいい同級生だった @16bit.inc.