「暁闇」(阿部はりか監督)

 この珠玉の青春映画を手がけた阿部はりか監督と撮影を担当した平見優子さんの2人には、つい先日、インタビューを行っている。まだ24歳で、今回が短編も含めて初の映画作品となった阿部監督と、彼女と同世代でみずみずしい映像感覚が高く評価されている平見さんとのツーショット取材は、終始笑いの絶えない和やかさで、あっという間に1時間半が経っていた。このインタビュー記事は、映画情報サイト「ミニシアターに行こう。」(http://mini-theater.com/)に掲載されたので、ぜひ読んでみてほしい。

 さて、この作品の何が珠玉かと言って、20代前半という阿部監督の年ごろでしか持ち得ない感性、感覚が、映像の端々から漂ってくることだ。主人公は3人の中学3年生。無気力な毎日を送るコウ(青木柚)、見知らぬ男たちと関係を重ねるユウカ(中尾有伽)、親の期待と現実の狭間で苦しむサキ(越後はる香)はいずれも、都会の片隅で悲しみを抱えて孤独に生きていた。3人の接点は、深夜にインターネットで公開されるある音楽を楽しむことだったが、ある日、その楽曲がすべて削除されて…。

 という3人が置かれた状況は、せりふではほとんど説明されない。実際にインターネットを通じてカルトな人気を集めるアーティスト、LOWPOPLTD.の音楽に載せて、3人の姿が映し出されるだけで、彼らの心の中は全く言葉では語られない。にもかかわらず、その映像から声にならない悲痛な叫びが浮かび上がってくるから不思議だ。

 中でも象徴的なのが、3人が出会う廃ビルの屋上だ。まるで船のようなコンクリートのオブジェが屋上に乗っかっていて、コウとサキがそれぞれ黙って読書をしている風景をシンメトリーにとらえた映像は、ほれぼれするほどかっこいい。よくぞこのロケ地を見つけ出したものだと、スタッフの炯眼に単複する。

 ラスト近く、3人の横顔越しに大輪の花火が咲き乱れる映像も特筆すべき美しさだし、阿部監督のイメージを平見さんが巧みにカメラに収めるコンビネーションは見事の一語に尽きる。10代の揺れる思いを繊細な映像で描いた枝優花監督の「少女邂逅」(2018年)に続いて、平見さんの映像センスの素晴らしさを再確認した。

サキの両親の描き方などステレオタイプな部分はあるし、彼らの行動理由をまるで示さないという放りっぱなしのドラマツルギーは、粗削りと言えば粗削りだが、それができるのも若さゆえの特権だろう。果敢に社会性を取り込もうとした意欲も立派だし、末恐ろしい監督が現れたものだと感懐を抱いた。(藤井克郎)

 2019年7月20日、東京・ユーロスペースでレイトショー公開。

©2018 Harika Abe/MOOSIC LAB

映画「暁闇」から。不安定な3人の中学3年生の心の揺れが繊細な映像で描かれる ©2018 Harika Abe/MOOSIC LAB

映画「暁闇」から。廃ビルの屋上で出会った3人は… ©2018 Harika Abe/MOOSIC LAB