インターネット上映でミニシアターを救え
新型コロナウイルスで苦境に陥っているミニシアターの一助に――。ドキュメンタリー映画作家の想田和弘監督と映画配給会社「東風」が提唱する「仮設の映画館」が、4月25日に開館する。といっても緊急事態宣言が出ている中、どこか1カ所に観客を集めて映画を見せようというわけではない。インターネットで有料公開することで、上映を予定していた全国の映画館にも入場料が配分されるという仕組みで、映画ファンにとっては新作が楽しめる上、休館を余儀なくされた映画館への貢献にもなる。
「仮設の映画館」は、5月2日に新作ドキュメンタリー「精神0」が公開予定だった想田監督が、配給元の東風と相談して提案。観客はインターネット上で配信される映画を選択し、その料金は劇場の入場料金と同様に映画館に分配される。「映画館で映画を観る」という行為を忘れないようにと、オリジナルのマナーCMも製作。上映前にはユーロスペースの岡崎真紀子さんによる「場内アナウンス」が流れるという具合だ。
現在のところ、東風に加え、ムヴィオラ、ユナイテッドピープル、シマフィルム、ノンデライコ、ニコニコフィルムの各配給会社が参加。4月25日から東風配給のドキュメンタリー映画「春を告げる町」(島田隆一監督)の配信を始めるほか、5月2日には、想田監督の「精神0」をはじめ、ムヴィオラ配給の「巡礼の約束」(ソンタルジャ監督)と「タレンタイム~優しい歌」(ヤスミン・アフマド監督)、ユナイテッドピープル配給「グリーン・ライ~エコの嘘~」(ヴェルナー・ブーテ監督)、シマフィルム配給「どこへ出しても恥かしい人」(佐々木育野監督)が公開されるなど、順次作品が増えていく。参加映画館は、東京のシアター・イメージフォーラム、ユーロスペース、ポレポレ東中野、岩波ホールなど、北海道から沖縄まで約50館に及ぶ。
「これは劇場、配給、製作、そして観客という『映画のエコシステム』を守るための苦肉の策です。ぜひとも趣旨をご理解いただき、積極的にご参加、拡散いただけると幸いです」と訴える想田監督は「コロナ禍が収束したあかつきには、本物の劇場で『精神0』を改めて公開することを目指しています。そのときはぜひ、『仮設の映画館』でご覧いただいたみなさんもお近くの劇場に足をお運びいただきたい。そしてオンラインで観るのとは全く別の経験をして、改めて『映画っていいもんだなあ』と実感していただきたい。やはり人間には『集う』ことが必要なのだと、集うことが自由にできなくなった今、切実に感じています」とコメントしている。
「仮設の映画館」で上映される「春を告げる町」
「仮設の映画館」で上映される「精神0」