今年の招待作品は7部門

 今年で41回を数える国内最大級の自主映画の祭典、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)。2019年9月7日から21日まで、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催されるが、8月1日には渋谷のLOFT9で、荒木啓子ディレクターらが出席してラインナップ発表会が開かれ、多彩なプログラムが明らかになった。

 若手映画作家の登竜門として確立している「PFFアワード」は、495本の応募から約4か月にわたる厳正な審査で選ばれた入選作18作品が上映される。手作りのアニメーションあり、モノローグだけの構成あり、日記のような記録映画あり、と今年もバラエティーに富んだ作品が選出された。

 この中からグランプリなどの各賞を5人の最終審査員で決定するが、この日はその一人として山下敦弘監督が発表された。会見場に姿を見せた山下監督は、かつてPFFアワードに作品を出そうと思っていた矢先、大学の卒業制作だった『どんてん生活』(1999年)が特別招待作品として上映され、応募する機会を失ったというエピソードを披露。できればPFFが制作資金を出してくれるスカラシップ作品を撮りたかったと打ち明け、「あれから20年がたつが、審査員の立場になるとは感慨深いものがある。若手の人生がかかっているので、しっかりと臨みたい」と審査への意気込みを口にした。

 一方、自主映画に取り組む人たちにぜひ見てもらいたいとの思いで選出している招待作品部門は、今年は7つのカテゴリーという実に幅広いセレクションになった。ガンダムシリーズの最新作、劇場版『ガンダム GのレコンギスタⅠ』(富野由悠季総監督、2019年)の特別先行上映のほか、「凄すぎる人たち~カッコいい女編・諦めない男編~」と称して『おみおくり~Sending Off~』(イアン・トーマス・アッシュ監督、2019年)の日本初上映など▽「ブラック&ブラック~映画と音楽~」と称して『私はあなたのニグロではない』(ラウル・ペック監督、2016年)など▽「巨匠たちのファーストステップPart4~長編デビュー作大集合~」と称して『メランコリーの妙薬』(バリー・ジェンキンス監督、2008年)の日本初上映など▽PFFスペシャル講座「映画のコツ」と称して、テラダモケイピクチャーズの作品など▽「カンヌ映画祭批評家週間って何?」と称して『典座―TENZO―』(富田克也監督、2019年)の特別先行上映など▽「追悼・吉武美知子プロデューサー~フランスと日本を繋ぎ続けた人~」と称して『ライオンは今夜死ぬ』(諏訪敦彦監督、2017年)など―と何でもありが魅力のラインナップになっている。

 この日の会見に出席した『ライオンは今夜死ぬ』の諏訪監督は「吉武さんは大女優にも照明のアシスタントにも分け隔てなく同じように友達の感覚で接する人で、彼女のおかげで現場がすごくよくなった。亡くなったのが今年6月で、すぐに特集を決断されたPFFには、感謝というか勇気を感じます」と話す。

 PFFディレクターの荒木さんは「自主映画の力って切実さなんじゃないかなと思っている。これを撮らなくちゃ、という最初の力が出ている作品が、ずっと残っていくのではないか。『巨匠たちのファーストステップ』で取り上げるあの時代のデビュー作と、自主映画が主流になっている今のデビュー作は変わってきているというコントラストを味わうのも面白いと思います」と自主映画鑑賞の勧めを説いていた。(藤井克郎)

ラインナップ発表会見で会場からの質問に答える荒木啓子PFFディレクター、山下敦弘監督、諏訪敦彦監督(左から)=2019年8月1日、東京都渋谷区(藤井克郎撮影)

ラインナップ発表会見に出席した荒木啓子PFFディレクター、山下敦弘監督、諏訪敦彦監督(左から)=2019年8月1日、東京都渋谷区(藤井克郎撮影)