海を越えて民族をつなぐ、島をつなぐ

 映画は世界の窓のように島々をつなぐ――。沖縄県を舞台に環太平洋地域に焦点を当てた新しい国際映画祭「Cinema at Sea-沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が2023年11月23日に開幕する。10月11日には東京・虎ノ門の台湾文化センターでラインナップ発表会見が開かれ、エグゼクティブディレクターを務める台湾出身で沖縄在住の映画監督、黄インイク氏は「現代の地図をいったん忘れて海から見ると、自分がいる世界が広がると思う。そのような体験を観客の皆さんにしてもらいたい」と話していた。

★アジアの文化が行き来するような映画祭に

 第1回となるCinema at Seaは11月23日(木)から29日(水)までの7日間、那覇市のぶんかテンブス館や桜坂劇場、南城市のあざまサンサンビーチなどを会場に開催。コンペティションやスペシャル上映、野外上映などの部門で約40作品が上映される。

 コンペティション部門は、マレーシアやオーストラリア、台湾、パナマなど、いずれも環太平洋の国や地域に関連した9本がそろった。このうち、「BEEの不思議なスペクトラムの世界」はフランス映画だが、南太平洋のニューカレドニアを舞台にしたドキュメンタリー。またインドネシア映画の「オルパ パプアの少女」は同国の最東端、ニューギニア島のパプア州出身初の監督によるデビュー作だという。日本からは越川道夫監督の「水いらずの星」が選ばれた。イラン出身のアミール・ナデリ監督を審査員長とする5人の審査でグランプリが決定される。

 このほか、注目の監督を取り上げるDirector in focus部門はハワイ出身の日系人、クリストファー・マコト・ヨギ監督を特集。また沖縄の言葉で「魂」を意味するマブイ特別賞の受賞者、高嶺剛監督作品の上映やVR(バーチャルリアリティー)の体験上映など幅広いラインナップとなっている。

 オープニング作品は、米ニューヨークを拠点に活動する砂入博史監督のドキュメンタリー映画「オキナワより愛をこめて」で、日本初上映となる。会見に出席した砂入監督は「琉球王国はアジアのハブと言われたようにハイブリッドな場所だった。この映画祭もアジアの文化が行き来するようなものになってくれたらすばらしい」と期待を寄せる。

★気軽に足を運んで双方向のやりとりを

 この日の会見には、公式アンバサダーを務める沖縄出身の俳優、尚玄や、Cinema at Seaの理事の一人で与那国島出身の東盛あいか監督も姿を見せ、映画祭の意義を強調。「沖縄でこういうインターナショナルな映画祭があったらいいなというのが僕の夢だった」と打ち明ける尚玄は「映画祭と言ってもあまり敷居の高いイメージは持ってもらいたくない。地元の人もふらっと見にきてほしいし、映画を愛する人が気軽に足を運んで、作る側と見る側の双方向のやりとりが活発に行われる映画祭にしたいと勝手に思っています」と熱く語る。

 八重山諸島で10年来、作品を撮り続けている黄氏は、環太平洋地域に特化することについて「台湾を発祥とする南島語族の文化は、ニュージーランドのマオリ族から沖縄の波照間島まで広い範囲に及んでいるし、沖縄移民はハワイから南米にまで広がっている。この2つの地図を重ね合わせて、海を越えて民族をつなぐ、島をつなぐという概念から、対象エリアを環太平洋に定めました」と解説。その交差点となる沖縄から、また新たな映画文化を発信する意欲を口にしていた。(藤井克郎)

第1回Cinema at Sea-沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバルのラインナップ会見にはエグゼクティブディレクターの黄インイク監督(左端)ら多彩な顔触れが出席した=2023年10月11日、東京都港区の台湾文化センター(藤井克郎撮影)

第1回Cinema at Sea-沖縄環太平洋フィルムフェスティバルのラインナップ会見で沖縄と映画について熱く語る尚玄(左)と東盛あいか監督=2023年10月11日、東京都港区の台湾文化センター(藤井克郎撮影)