これを見ないでどうすんだ!

 若手監督の登竜門としてすっかりおなじみになった田辺・弁慶映画祭。毎年11月、和歌山県田辺市を舞台に若い感性がしのぎを削るが、昨年の第12回で受賞した作品を一挙に集めて連続上映する「田辺・弁慶映画祭セレクション」が、今年も東京と大阪で開催される。東京は6月28日から3週間、テアトル新宿を会場にレイトショーで上映されるが、目前に控えた19日には下北沢の本屋B&Bで前夜祭が開かれ、参加する5人の監督らが熱いトークを繰り広げた。

 今年の上映監督は、昨年の弁慶映画祭で最高賞に当たる弁慶グランプリと女優賞の2冠に輝いた「チョンティチャ」の福田芽衣監督のほか、品田誠、近藤啓介、野村奈央、石井達也の各監督。それぞれ工夫を凝らしたラインアップを引っ提げてセレクションに臨む。

 例えば近藤監督は、弁慶映画祭では「ウーマンウーマン」という31分の作品で観客賞を受賞したが、セレクションではさらに後半部分を撮り足して、「ウーマンウーマンウーマン」という長編作品に仕上げた。また石井監督は、映画鑑賞のプロとも言うべきキネマイスター審査員が選出するキネマイスター賞を受賞した「すばらしき世界」のほか、撮り下ろしの長編「万歳!ここは愛の道」を初披露する。

 この作品は、石井監督の恋人だった「チョンティチャ」の福田監督にカメラを向けたセルフドキュメンタリーで、福田監督がプロデューサーを務めている。福田監督は昨年の弁慶映画祭の後、2年間の記憶をすっかり失うという病に見舞われ、「チョンティチャ」を撮ったときのことは全く覚えていない。この日の前夜祭で、石井監督は「俺と彼女にとって映画って何だったのか。映画のことを語ってはいないが、カメラが回っているので、映画になっているかなと思います」と語る。

 一方の福田監督は、日本に住むミャンマー人とタイ人のハーフの少女を主人公にした「チョンティチャ」について、「今の時代にこれを見ないでどうすんだ、という思いはある。ニュースを見るんだったら、映画を見ろ、みたいな感じですね」と挑発するなど、5人とも自作を大いにアピールしていた。

「田辺・弁慶映画祭セレクション2019」は、2019年6月28日から7月18日までの東京・テアトル新宿に続いて、7月26日から8月1日までは大阪のシネ・リーブル梅田で開催される。(藤井克郎)

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田辺・弁慶映画祭セレクション前夜祭に集まった5人の若手監督たちー 場所: 本屋B&B

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田辺・弁慶映画祭セレクション前夜祭に集まった5人の監督に出演者らー 場所: 本屋B&B