4人の芝居という四重奏を楽しんで! 

 カルテットの調べに酔いながら、公開間近の青春映画に思いをはせる―。高校時代の甘酸っぱい記憶が刻み込まれた映画「あいが、そいで、こい」(柴田啓佑監督)が2019年6月22日に東京で公開されるのを前に、音楽を担当した弦楽四重奏ユニット「LESS IS MORE」のライブコンサートが20日夜、東京・渋谷のeplusリビングルームカフェ&ダイニングで開かれた。会場には、柴田監督をはじめ、映画の出演者が大挙駆けつけ、約150人の聴衆を前に映画の魅力を伝えた。

 「あいが、そいで、こい」は、昨年の社会現象にもなった「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)など話題作を送り出してきたENBUゼミナール主催「シネマプロジェクト」の第8弾作品。このプロジェクトは、監督が主催するワークショップの参加者から出演者を選抜して長編映画を作るという企画で、短編の「ひとまずすすめ」が田辺・弁慶映画祭のグランプリを受賞するなど幅広く活躍する柴田監督の初長編映画になる。

 今回の新作は、その田辺・弁慶映画祭が開かれる和歌山県田辺市を中心に撮影された。2001年の夏、海辺の田舎町に住む萩尾亮(高橋雄佑)は、高校最後の夏休みを、同級生の学(古川ヒロシ)、小杉(廣瀬佑樹)、堀田(長部努)とともに、海の家を手伝って過ごすことになった。そんなある日、イルカの調教師を目指して台湾からやってきた留学生、リン(小川あん)と出会う。ことごとく意見が合わない2人だったが、やがて…。

 という青春の1ページの思い出が、新人俳優たちのみずみずしい演技と、遠浅の浜辺に象徴される美しい映像に、LESS IS MOREのアコースティックなサウンドが重なり、ギュッと胸が締めつけられるようにつづられる。

 この日のコンサートは、「あいが、そいで、こい」公開前夜祭と銘打って、柴田監督のほか主演の高橋にヒロイン役の小川ら主な出演者、それに脚本の村上かのんさんら、総勢13人の映画関係者が集合。LESS IS MOREの4人による演奏を、ときに一緒になって盛り上げるなど、会場を映画の世界にいざなった。

 挨拶に立った出演者らは、小川が「音楽もすごく素敵だし、田辺の美しい情景も映っているので、ぜひ劇場の大きいスクリーンでご覧ください」と話せば、主人公の幼なじみ役を演じた中垣内彩加は「この映画は絶対に誰かしらに共感できるような映画だと思う。劇場でお待ちしています」と強調。また悪ガキ4人組の一人、堀田役の長部が「僕ら4人の芝居という弦楽四重奏を、ぜひ楽しんでいただけたら」と、LESS IS MOREの演奏になぞらえてアピールすると、会場から笑いと拍手が沸き起こった。

 柴田監督は「こんなバラエティーに富んだキャストでやっている。映画館には毎日、誰かしらいるので、会いにきていただけたらいいなと思います」と呼びかけていた。

 映画「あいが、そいで、こい」は、2019年6月22日から東京・新宿K’s cinema、28日から和歌山・ジストシネマ田辺、7月27日から大阪・第七藝術劇場など、順次公開。(藤井克郎)

映画「あいが、そいで、こい」の魅力をアピールする柴田啓佑監督らスタッフ、キャスト=6月20日、東京都渋谷区(藤井克郎撮影)

LESS IS MOREの4人の演奏を会場と一体になって盛り上げる映画「あいが、そいで、こい」の出演者ら=6月20日、東京都渋谷区(藤井克郎撮影)