今年も刺激的な作品がずらり
アジアを中心に世界の最も先鋭的な作品が集まる映画祭、東京フィルメックス。第20回となる今年は、11月23日(土)から12月1日(日)までの9日間、東京・有楽町朝日ホールほかで開かれるが、10月10日には東京・赤坂の東京ドイツ文化センターで上映作品のラインアップが発表された。
上映作品は27作品が予定されている。メーンのコンペティション部門には、インド、シンガポールなどアジア各地から10作品が登場。この中には、フィルメックスの若手育成プログラム「タレンツ・トーキョー」出身のカンボジア人、ニアン・カヴィッチ監督のデビュー作「昨夜、あなたが微笑んでいた」や、過去に2度も最優秀作品賞を受賞しているチベット人のペマツェテン監督作「気球」など、フィルメックスゆかりの作品も並ぶ。日本からは、宮下奈都の小説を映画化した中川龍太郎監督の「静かな雨」と、ブックデザインを手がける菊地信義に迫るドキュメンタリー、広瀬奈々子監督の「つつんで、ひらいて」の2作品が選ばれた。審査員には、イランの女優、ベーナズ・ジャファリ、香港の監督、脚本家で大学でも教鞭を執るシュウ・ケイ、日本の写真家、操上和美らが当たる。
このほか特別招待作品として、第1回で最優秀作品賞を受賞している中国のロウ・イエ監督「シャドウプレイ」がオープニングを飾るほか、クロージングには「スモーク」(1995年)などで知られる名匠、ウェイン・ワン監督の「カミング・ホーム・アゲイン」を上映。さらにはサウジアラビアの新鋭、ハイファ・アル=マンスール監督の「完全な候補者」、ポルトガルの鬼才、ペドロ・コスタ監督のロカルノ国際映画祭金豹賞受賞作「ヴィタリナ(仮題)」、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したイランのジャファル・パナヒ監督作「ある女優の不在」など、注目の話題作が用意されている。また特集上映として、今年がデビュー30周年となる阪本順治監督の「ビリケン」(1996年)など4作品、歴代受賞作から人気投票を行って上位に入った「ふたりの人魚」(2000年、ロウ・イエ監督)など3作品も予定されている。
この日の発表には、コンペティション部門に選ばれた日本人監督の中川監督と広瀬監督が参加。中川監督が「ちょっと独特の世界観なので、ぜひ見ていただけたら」と自作をアピールすれば、昨年も「夜明け」がフィルメックスで上映された広瀬監督は「こんな豪華なラインアップの中で、なんで私の作品が、という感じですが、本当に光栄に思っています」と喜びを口にしていた。
今年は20回目という節目の年だが、ディレクターの市山尚三さんは「作品の選定に関しては、20周年だからということは特別に考えてはいない。ただ結果的には、第1回でグランプリを取ったロウ・イエ監督の新作をオープニングにするなど、過去にフィルメックスで上映した監督の作品が多い感じはします」と話していた。
に出席した市山尚三ディレクター(左端)に中川龍太郎監督(左から2人目)、広瀬奈々子監督(同3人目)ら=10月10日、東京都港区の東京ドイツ文化センター(藤井克郎撮影)
中川龍太郎監督作「静かな雨」 ©2019「静かな雨」製作委員会/宮下奈都・文藝春秋
広瀬奈々子監督作「つつんで、ひらいて」 ©2019「つつんで、ひらいて」製作委員会
オープニング作品のロウ・イエ監督作「シャドウプレイ」 ©DREAM FACTORY, Travis Wei
クロージング作品のウェイン・ワン監督作「カミング・ホーム・アゲイン」