14歳の中学生の作品も入選
「不器用でもいいから個性が爆発している映画が見たい」――。46回目を迎える自主映画の祭典、ぴあフィルムフェスティバル2024が9月7日(土)から21日(土)まで、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。コンペティション部門の「PFFアワード2024」をはじめ、今年も多彩なプログラムが用意されているが、8月8日に東京・渋谷のLOFT 9 Shibuyaで開かれたラインナップ発表会には、最終審査員を務める吉田恵輔監督と招待作品部門のゲストとして来場する犬童一心監督が出席し、映画祭への期待を口にした。
★スマホだけで撮影の作品も当たり前に
今年のPFFアワードは、692本の応募の中から約4カ月に及ぶ審査を経て、入選作19本が決定。期間中、8つのプログラムに分かれて上映される。入選作の中には、14歳の中学生を筆頭に18歳以下の監督による作品が3本含まれているほか、海外からの留学生による作品など多彩なラインナップになった。
発表会に出席したPFFディレクターの荒木啓子さんによると、近年はスマートフォンだけで撮影されるものも普通になってきており、撮ったからには気軽に応募してほしいと積極的に10代へのキャンペーンを図っているという。「14歳の中学生や18歳の高校生の作品が入選するなど、とてもうれしい年になった。それに女性の応募が増えていて、入選作品の3分の2が女性監督の作品。意図したわけではないが、時代の流れを表しているなと感じます」と話す。吉田監督に加え、フィルムメーカーの小田香、作家の小林エリカ、クリエイティブディレクターの高崎卓馬、俳優の仲野太賀の各氏が最終審査に当たる。
招待作品部門も多種多様で、今年2024年が生誕100年となる増村保造監督作品13本をそろえた「生誕100年・増村保造新発見!~決断する女たち~」、8ミリフィルム全盛だった時代の傑作自主映画を集めた「自由だぜ!80~90年代自主映画」、7月に51歳で急逝した俳優、中村靖日を追悼する「【緊急特集】中村靖日さんを偲んで」といったプログラムが組まれている。
このうち、80~90年代自主映画特集には、発表会に出席した犬童監督が高校時代に8ミリで撮った「気分を変えて?」(1979年)をはじめ、利重剛(当時は笹平剛)監督の「教訓Ⅰ」(1981年)、今関あきよし監督の「ORANGING’79」(1979年)など、現在第一線で活躍する監督たちの貴重な初期作品を上映。浅野秀二監督の「この道はいつか来た道」(1983年)は、黒沢清監督らが所属していた立教大学の伝説的映画サークル「パロディアス・ユニティ」のメンバーが総出演している作品で、実は犬童監督も出ているという。
★見てくれた人がいたという喜びが原点
高校時代、8ミリで映画を撮る参考に大学生の映画をよく見にいっていたものの、たいていはつまらない作品ばかりの中、黒沢監督の「SCHOOL DAYS」が圧倒的に面白くて、影響を受けて作ったのが「気分を変えて?」だったという犬童監督は「文化祭で上映しても誰も見にきてくれなかった中、PFFに入選したと電話がかかってきたときに最初に思ったのは、客がいたということ。賞をもらったということより、見てくれた人がいた、というのがものすごくうれしかった」と振り返る。
一方、映画の専門学校に通っていた吉田監督は、自分が応募すれば一発でグランプリだなと根拠のない自信でPFFに臨んだものの、1次審査で落とされるなどこてんぱんにやられたと打ち明ける。 因縁の映画祭で審査員を務めることになって「不思議な縁を感じる」と話す吉田監督は「技術的な差が大きかった時代と違って、今はiPhoneでもめちゃめちゃきれいに撮れるし、勝負のしどころが昔とは違ってきている気がする。自主映画では、これが自分だというカラーが出ているもの、独りよがりなものでいいのではないか。こいつ俺が失ったものを持っている、というやつと出会いたいと思っています」と楽しみにしていた。(藤井克郎)
第46回ぴあフィルムフェスティバルの見どころを紹介する荒木啓子ディレクターと吉田恵輔監督、犬童一心監督(左から)=2024年8月8日、東京都渋谷区のLOFT9 Shibuya(藤井克郎撮影)
犬童一心監督が高校生のころに撮った8ミリ作品「気分を変えて?」から