「コントラ KONTORA」日本外国特派員協会で会見

祖父たちの戦争体験を描き継ぐ

 若い世代が歴史への向き合い方を考えるきっかけになれば―。インド出身で日本を拠点に活動するアンシュル・チョウハン監督の長編第2作「コントラ KONTORA」が3月20日から劇場公開されるのを前に、東京・丸の内の日本外国特派員協会で11日、試写会と記者会見が開かれた。外国人が日本映画を撮ることの障壁について尋ねられたチョウハン監督は「日本の友人はたくさんいて話を聞くことができるし、特に何の抵抗も感じなかった」と映画のボーダレスを強調した。(藤井克郎)

「コントラ KONTORA」は、日本の田舎町を舞台に、祖父が書き残していた戦争中の日記を見つけた高校生のソラが、後ろ向きに歩く男と出会って起こるさまざまな葛藤が、モノクロの厳しくも深みのある映像で描かれる。祖父が伝えたかったこととは何なのか。なぜ男は後ろ向きに歩いているのか。そんな数々の謎が、父と娘の冷え切った関係や地域社会の閉鎖性、第二次世界大戦の記憶などさまざまな要素と絡み合って紡ぎ出される。エストニアで開催された「タリン・ブラックナイト映画祭2019」でグランプリに輝いたほか、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」国内長編部門で最高賞の優秀作品賞、北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ2020」では新設の大林賞を受賞と、国内外で高い評価を受けている。

 この日の記者会見には、チョウハン監督のほか、ソラを演じた円井わんと、後ろ歩きの男役の間瀬英正も出席。英語、日本語が入り混じって質疑応答が繰り広げられた。

 最初の質問で「後ろ向きに歩く男」のことを聞かれたチョウハン監督は、4~5年前にYouTubeで目にした映像がアイデアのヒントになったと打ち明ける。

「デリーに住んでいる男性で、不幸があって後ろ向きに歩くようになり、いつもノートを携えて車のナンバーを書き記しているということでした。その映像がものすごく印象に残っていて、ある映画に盛り込もうとしたんですが、それは実現しなかった。今回、『コントラ』を撮ることになって、そのエピソードをぜひ使ってみたいと思いました」と英語で語る。

 一方、徹頭徹尾、後ろ向きに歩く演技を貫いた間瀬は「この男は戦争からよみがえってきたような男で、記憶がおぼろげな状態から、よみがえってきた使命をだんだんと思い出す。そういう部分を意識的に演じていました。アンシュルはなかなかカットを入れてくれないんです。私は何があろうと後ろ向き、逃げたくなっても後ろ向き、と気をつけていました」と笑わせる。

 全編モノクロにしたのは、チョウハン監督の祖父に対する強い思いがあった。「この映画は、祖父や戦争に参加した兵士にささげられている。祖父の写真は1枚しか残っていないが、それもモノクロだし、インターネットで第二次世界大戦中の資料をいろいろとリサーチしたら、どれもほとんどがモノクロの写真だった。モノクロの映像にすることで、この映画を戦争中の人々の時間や命にささげることができると思いました」

 質疑は、外国人であるチョウハン監督が日本映画を撮る難しさについても及んだ。例えば父と娘の関係がいかにも日本的で、日本人の監督なら何でもない描写でも、外国人が撮ると批判していると受け取られるのではないか。そう聞かれた監督は「全く気にしたことはない」と明言する。

「自分の高校時代の個人的な気持ちをソラという高校生に託したのであって、日本の観客のために作るという意識はありません。自分が撮りたい映画を撮りたいと思って作っただけです。ただ一つ懸念があるとすれば、第二次世界大戦のことを扱っているので、なぜ戦争のことを取り上げたのかと疑問を持たれることはあるかなということです」

 戦争については、ソラを演じた円井も、後ろ歩き男の間瀬も、実感がないのは変わりがない。「自戒を込めて言うと、私たちの世代は知らないことが多すぎる。祖父たちが体験したものを絶対に後に継いでいかないといけないし、そういった体験を知ることができるのが映画だったりするのかなと思っています。ぜひ今後も残っていく映画になってくれればいいですね」と円井が言えば、間瀬も「過去の日本や日本人に対する弔いの気持ちを、今の時代に生きるソラと一緒に感じていただけたら」とアピールする。

「個人的な動機で作り始めたので、撮っていたときはいろんな人に見てもらわなくてもいいくらいの気持ちだった」と語るチョウハン監督だが、さまざまな映画祭で上映されて国内外からの賞賛の声が届き、今はうれしい気持ちでいっぱいだという。

「これまでは年上の世代からの反応が多かったが、ぜひ若い人たちにも見てほしい。若い世代が自分たちの知らない歴史にどう向き合うのか。知らないということをどう感じるのか。そんなことを考えるきっかけになってくれれば」と劇場公開に期待していた。

「コントラ KONTORA」は2021年3月20日(土)から、新宿K’s cinemaなど全国で順次公開。

上映後の記者会見に出席したアンシュル・チョウハン監督(右から2人目)ら=2021年3月11日、東京都千代田区の日本外国特派員協会(藤井克郎撮影)

記者会見後に写真撮影に応じるアンシュル・チョウハン監督と出演者の円井わん、間瀬英正(左から)=2021年3月11日、東京都千代田区の日本外国特派員協会(藤井克郎撮影)

映画「コントラ KONTORA」から Ⓒ 2020 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED

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