日本との国交樹立100年を迎えたポーランドの文化を楽しんで―。今年で8回目を迎えるポーランド映画祭が東京と京都で開幕した。東京会場の東京都写真美術館ホール(東京都目黒区三田)では初日の11月10日、第1回から映画祭の監修を務める巨匠、イエジー・スコリモフスキ監督らが舞台挨拶に登場。詰めかけた映画ファンを前に見どころをアピールした。
ポーランド映画祭は、2012年に第1回が開催されて以来、年々、活況を呈している。今年は、日本との国交樹立100周年を記念して、日本との関係が深い作品をそろえたほか、多彩なプログラムが組まれている。
国交樹立100周年作品としては、アンジェイ・ワイダ監督が坂東玉三郎主演でドストエフスキー著「白痴」を映画化した「ナスターシャ」(1994年)、クラクフにある日本美術技術博物館“マンガ”館の設立に尽力したワイダ監督らの記録を収めた「アンジェイ・ワイダの建築へかける情熱」(2017年、ヤツェク・レンチョフスキ監督)、ワイダ監督やスコリモフスキ監督らも学んだウッチ映画大学出身の石川慶監督の作品「愚行録」(2017年)などがラインアップに並ぶ。
また、ワイダ監督作では「死の教室」(1976年)、「灰とダイヤモンド」(1958年)、スコリモフスキ監督作では「バリエラ」(1966年)などが上映されるほか、昨年から今年にかけて相次いで亡くなったカジミェシュ・クッツ監督の「沈黙の声」(1960年)、リシャルト・ブガイスキ監督の「尋問」(1982年)を追悼上映。さらに「ユリウシュ」(2018年、アレクサンデル・ビェトシャク監督)、「ザ・ベスト」(2017年、ウカシュ・バルコフスキ監督)といった最新ポーランド映画の日本初上映も予定されている。
東京での開幕には、「執事の人生」(2018年)のフィリプ・バヨン監督、「ソリッド・ゴールド」(2019年)のヤツェク・ブロムスキ監督と、最新作が上映される両監督も登壇。ブロムスキ監督が「ポーランド映画が日本で高く評価され、多くのファンに届いていることをうれしく思う」と話せば、今回が初来日というバヨン監督も「私は日本の歴史を知らなくても日本の時代劇映画を見て感動を覚えた。今回上映される新作はポーランドの複雑な歴史を描いた作品で、日本で見ていただけることをうれしく思う」と語っていた。
ポーランド映画祭は、東京では2019年11月23日、京都では同22日までの開催。来場ゲストによるトークイベントのほか、期間中はポーランド文化にかかわるさまざまな文化イベントが東京都内各所で予定されている。(藤井克郎)
ポーランド映画祭2019の開幕挨拶に登壇したフィリプ・バヨン監督(左から2人目)、ヤツェク・ブロムスキ監督(同3人目)、イエジー・スコリモフスキ監督(同4人目)ら=2019年11月10日、東京都目黒区の東京都写真美術館ホール(藤井克郎撮影)